ハイパーサーミアに関する最近の話題4

MRガイド下集束超音波による本態性振戦治療の技術的要点
東海大学:黒田 輝

 

 ハイパーサーミアは狭義には42.5〜43℃の温度域に組織を加温することによって主として悪性腫瘍を細胞死に至らしめる治療だが、温度域や適用疾患を広げた温熱療法という括りでは、様々の先進的治療法が生み出されている。その好例が集束超音波治療(Focused Ultrasound Surgery, FUSまたはHigh Intensity Focused Ultrasound, HIFU)による中枢神経系の治療である(1)。ここではひとつのトピックスとして、薬物難治性本態性振戦や振戦優位のパーキンソン病に対するMR(Magnetic Resonance)ガイド下のHIFU治療法(2)を紹介する。この治療法ではターゲットとしての視床腹中間(Vim)核を、経頭骨的な超音波照射による焦点形成によって凝固させる。この治療における技術的な要点は、まず第1に頭蓋骨を通しての超音波照射である。骨は高含水組織と音響特性が大きく異なる(例えば1 MHzの超音波の減衰定数は筋肉の0.15 cm-1に対して骨は1.5 cm1) ため、一般には骨の向こう側にある組織に高いエネルギーの超音波を当てるのは難しいと考えられてきた。しかし、逆に考えれば、わずかなエネルギーは届くわけであり、数多くの波源(トランスデューサ)を使っていろいろな向きから超音波を当て焦点を形成すれば、ある程度高いエネルギーを与えることができる(3)。ただし、頭蓋骨の厚みや凹凸は部位によって異なるため、術前にX線CTを使って形状を精密に計測し、各トランスデューサからの超音波ビームがどのような減衰と位相変調を受けるかを予め求め、それらを受けた結果としてターゲット位置で焦点を結ぶように、トランスデューサ毎に振幅と位相を調整する必要がある(3)。第2の要点は治療対象部位を解剖学的に捉えると共に、超音波照射中の温度を実時間でモニタするためのMRによる治療計画・監視である。水の水素原子核の磁気共鳴周波数の変化を捉えることにより脳の温度は比較的正確に定量・画像化することができる(4)。これらの要素に関する学術研究の成果として、現在1,024チャンネルのアンプとトランスデューサを有する治療機器が存在する(1)。振戦の治療では周波数を650 kHz程度とし、焦点位置確認のための低エネルギー照射の後、10,000〜20,000 Jのエネルギーを投与する。この治療は日本国内の病院においても最近臨床研究が実施されている(5)。

 

(1) Weintraub D, Elias WJ. The emerging role of transcranial magnetic resonance imaging-guided focused ultrasound in functional neurosurgery. Mov Disord. 2016 Apr 8. doi: 10.1002/mds.26599.

(2)Dobrakowski PP, Machowska-Majchrzak AK, Labuz-Roszak B, Majchrzak KG, Kluczewska E, Pierzchała KB. MR-guided focused ultrasound: a new generation treatment of Parkinson's disease, essential tremor and neuropathic pain. Interv Neuroradiol. 2014 May-Jun;20(3):275-82.

(3)Clement GT, Hynynen K. A non-invasive method for focusing ultrasound through the human skull. Phys Med Biol. 2002 Apr 21;47(8):1219-36.

(4)McDannold N, King RL, Jolesz FA, Hynynen K. The use of quantitative temperature images to predict the optimal power for focused ultrasound surgery: in vivo verification in rabbit muscle and brain. Med Phys. 2002 Mar;29(3):356-65.

(5) Asahi Shinbun Digital. June 17, 2016. http://www.asahi.com/and_M/information/pressrelease/

Cjcn16061730626.html

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