ハイパーサーミアに関する最近の話題6


”ハイパーサーミアに関する最近の話題 Int J Hyperthermiaの総説より”     
(京都大学原子炉実験所放射線生命科学研究部門 増永慎一郎)

 

2000年に、HanahanとWeinbergによって提唱された6つの”The hallmarks of cancer”は、2011年に改訂され、さらに4つの特性 (代謝異常、腫瘍免疫機構の破綻、腫瘍発生を促す炎症、細胞微小環境)が加えられたが、低酸素やpHの影響を受ける組織内微小環境には、特段言及されなかった。この総説では、Hyperthermiaの生物学に大きく影響する上記4つの特性に焦点を当て、前臨床的な動物を用いた研究成果を概観し、Hyperthermiaの生物研究領域における先見的萌芽的な研究領域に言及している。① 生理学的組織内微小環境領域では、酸性化薬剤と殺腫瘍細胞効果を期待できる治療領域温度に加温するHyperthermia (HTM)との併用効果の更なる解析、Ablationにおける薬剤取り込み機構の解析、発熱程度の低温度加温療法Mild temperature hyperthermia (MTH)の有用性を支える基盤的機構の解析、② 腫瘍免疫・炎症・自己免疫・酸素ラジカルストレス研究領域では、Heat shock protein (HSP)とAbscopal effectとの関係の解析、Ablationにおける腫瘍の侵襲性の亢進と抗腫瘍免疫の亢進との相殺性に関する解析やさらには薬剤併用時の解析、MTH時の抗腫瘍免疫亢進の機構解析、加温時一般のマクロファージ・好中球・自己免疫機構への影響解析、HTMやAblationと酸素ラジカル反応との関係解析、③ 血管新生領域では、HTM・Ablation・MTH時の血管新生阻害剤使用意義の解析、④ 幹細胞研究領域では、HTM・Ablation・MTHが腫瘍と正常組織の幹細胞に及ぼす影響解析、⑤ 細胞代謝研究領域では、HTM時の解析は十分に機が熟しており、MTH時の解析でも研究成果が出つつあると報告している。結論としては、ナノテクノロジー領域と炎症研究領域では、加温に関する研究が少なく、なお一層行われるべきであると述べている (1)。

温熱併用放射線治療の改善のための現実的な生物学的アプローチに関する総説(2)では、① 腫瘍内の細胞を標的とする場合には、生体還元物質、酸性化薬剤、DNA修復阻害剤、ナノ粒子、免疫修飾剤、HSP90阻害剤の投与が取り挙げられた。低酸素細胞、特に栄養不足状態でもある慢性低酸素細胞は、基本的には栄養不足状態ではない急性低酸素細胞よりもDNA修復能が低い。この特性は、DNA修復阻害剤を低線量の放射線照射とともに使用すると、正常細胞では大きな修復能を期待できるために、有害事象の出現を効率よく低減できる。② 腫瘍内血管を標的とする場合には、一時的血管修飾剤、血管新生阻害剤、腫瘍血管破綻剤の投与が取り上げられ、放射線照射とのタイミングの重要性が強調された。③ 最後に①又は②の治療時における正常組織への影響研究に言及されたが、報告が極めて少なく、更なる研究が期待される事が指摘された (2)。この総説が触れた腫瘍内細胞を標的とするDNA修復阻害剤を用いるHTM領域温熱療法には、プラチナ剤やPARP阻害剤投与時の効果を増強させ、加温領域を標的病変とする一種の標的治療としての潜在的有用性が十分に認められる事を示す総説(3)も掲載されていた。

 

<文献>

(1)    Mark W. Dewhirst, Chen-Ting Lee, Kathleen A. Ashcraft. The future of biology in driving the field of hyperthermia. Int J Hyperthermia 2016, 32(1): 4-13.

(2)    Michael R. Horsman. Realistic biological approaches for improving thermoradiotherapy. Int J Hyperthermia 2016, 32(1): 14-22.

(3)    Rolf Issels, Eric Kampmann, Roland Kanaar, Lars H. Lindner. Hallmarks of hyperthermia in driving the future of clinical hyperthermia as targeted therapy: translation into clinical application. Int J Hyperthermia 2016, 32(1): 89-95.

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