ハイパーサーミアに関する最近の話題7

食道癌に対する治療の動向とハイパーサーミアの役割
(九州がんセンター消化管外科 森田勝、九州大学消化器・総合外科 前原喜彦)

 

食道癌は元来、難治性の癌とされてきたが、近年、早期発見、術式・周術期管理の向上などで切除後の5年生存率は約50%ときわめて向上してきた。治療におけるGolden standard は根治手術といえるが、成績向上には術前後の補助療法がとくに重要である。切除可能なStage II, IIIの食道癌に対しては、欧米では術前化学放射線療法(CRT)後に根治術を行うことが多いが、本邦ではCF療法(シスプラチン+5-FU)を用いた術前化学療法を行うことが現時点での標準療法となっている。これにはJCOGを中心としたいくつかの臨床試験がベースとなっているが、中でも術前化学療法(NAC)と術後化学療法を比較したJCOG9907がNACを標準療法とする根拠になっている。この試験の5年生存率は術前投与群55%と術後群43%に対し有意に良好であった。しかし、サブグループ解析ではStage IIで有意差はあるものの、Stage IIIではこの差は認めない[1]。実臨床においてもCF療法によるNACでは無効なこともしばしば経験され、症例によってはより強力なレジュメが求められる。現在、JCOGでは、術前CF療法とそれにDocetaxelを加えた術前DCF療法、さらにCFに照射を加えた術前CRTの3群を比較する第III相試験を実施中である(JCOG1109)。

温熱は放射線や抗癌剤と併用することにより効果を増強させる。我々は食道癌の予後向上を目指して腔内加温装置を開発し、臨床応用した。その結果、術前CRTに温熱を加えた群(HCRT)はより高い組織学的治療効果が得られ、有意に予後が良好であることを報告した[2]。最近、Nakajimaらは食道癌症例に低容量のDocetaxelを用いたCRTに体外加温をもちいた成績を報告している。本報告によると24人の奏効率は42%で、手術が行われた17名の5年生存率は50%であった[3]。

一方、根治的CRTは従来、高度進行食道癌や全身的要因により切除不能な食道癌に対し行われることが多かったが、1990年代より切除可能な食道癌に対しても行われるようになってきた。特にStage Iの食道癌に対しては根治手術に匹敵するとの報告もある。しかし、それに伴い、根治的CRT後の癌の遺残や再発に対する治療が問題となっている。特にこれらに対するサルベージ手術は、術後合併症や手術関連死亡が多く、きわめてハイリスクの手術と考えられている。実臨床の場においては、このリスクのためにサルベージ手術を断念せざるを得ないことも多い。さらに、すでに根治照射が行われ、追加照射も困難なことが多い。このような症例にこそハイパーサーミアを導入すべきだと思われる。我々は11例の食道癌症例のサルベージ治療として、化学療法に温熱療法を行い12ヶ月のMSTを得た。本治療は、外来治療が可能で、重篤な有害事象も認めず、今後、再発後のサルベージ治療として温熱療法を加えることは意義深いものと考えられる[4]。

 近年、様々な分子標的薬が臨床応用され、中でも、免疫チェックポイント阻害剤は食道癌においてもすでに治験が進行している。これらの薬剤と温熱の併用効果を検討し、新たな治療として温熱療法が再び脚光を浴びる日がくることを、ハイパーサーミア学会会員として願っている。

 

<文献>

 

1 1. Ando N, Kato H, Igaki H et al. A randomized trial comparing postoperative adjuvant chemotherapy with cisplatin and 5-fluorouracil versus preoperative chemotherapy for localized advanced squamous cell carcinoma of the thoracic esophagus (JCOG9907). Ann Surg Oncol 2012, 19: 68-74.

2 2. Morita M, Kuwano H, Araki K et al. Prognostic significance of lymphocyte infiltration following preoperative chemoradiotherapy and hyperthermia for esophageal cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2001, 49: 1259-1266.

3 3. Nakajima M, Kato H, Sakai M et al. Planned esophagectomy after neoadjuvant hyperthermo-chemoradiotherapy using weekly low-dose docetaxel and hyperthermia for advanced esophageal carcinomas. Hepatogastroenterology 2015, 62: 887-891.

4 4. Nishimura S, Saeki H, Nakanoko T et al. Hyperthermia combined with chemotherapy for patients with residual or recurrent oesophageal cancer after definitive chemoradiotherapy. Anticancer Res 2015, 35: 2299-2303.

ご注意

このWebでは一般社団法人日本ハイパーサーミア学会についての一般的な情報を提供しています。
症例や治療に関する個人的な電子メールならびに電話でのお問い合わせには、誠に恐縮ですが、一切お答えすることは出来ませんのであしからずご了承下さい。