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IER5による新規のHSF1活性化機構およびがん細胞でのIER5の過剰発現による腫瘍形成
福井大学・松本 英樹

ストレス応答において重要な役割を担っている転写因子p53およびHSF1をつなぐIER5による新規のHSF1活性化機構およびIER5の過剰発現による腫瘍形成に関する論文を紹介する。
以前に浅野らは、温度感受性p53変異細胞を用いて新規の遺伝子発現により調節されているがん化過程を精査し、いくつかのp53標的遺伝子を見出している。さらに正常型p53遺伝子を保有するHCT116細胞を用いていくつかのp53標的遺伝子を見出している1,2)。
最近、彼らは、転写因子HSF1およびp53が何れもストレス応答を調節し、ストレスを受けた細胞を防御し、回復を促進しているが、腫瘍増殖を促進する能力も持ち合わせている点に着目し、HSF1の活性化因子をコードしているp53標的遺伝子の一つであるIER5について精査し、以下の発見をした3)。
①IER5は多くのがん細胞で発現促進されていたが、それら全てがp53依存的ではなかった。
②IER5の発現促進はハイパーエンハンサー近傍への転座あるいは超活性型がん遺伝子近傍への転座によるものであった。
③IER5タンパク質はHSF1およびPP2A(フォスファターゼ)と三量体を形成してHSF1のセリンおよびスレオニン残基の脱リン酸化を促進することにより新規の低リン酸化型活性化HSF1を誘導した。
④がん細胞では発現促進されたIER5タンパク質は異常なHSF1の活性化を誘導し、ストレス環境下での腫瘍形成に寄与していた。
これらの結果は多くのがん細胞で認められているHSF1の活性化に対応したIER5を介する新規の腫瘍形成機構が存在することを示している。

文献
1) Kawase, T. et al. p53 target gene AEN is a nuclear exonuclease
required for p53-dependent apoptosis. Oncogene 27, 3797-3810(2008).
2) Kawase, T. et al. PH domain-only protein PHLDA3 is a p53-regulated
repressor of Akt. Cell 136, 535-550 (2009).
3) Asano, Y. et al. IER5 generates a novel hypophosphorylated active
form of HSF1 and contributes to tumorigenesis. Sci. Rep., DOI:
10.1038/srep19174.

参考
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160113.html

IER5:immediate early response 5
HSF1:heat shock transcription factor1(熱ショック転写因子1)
PP2A:protein phosphatase 2A (タンパク質ホスファターゼ 2A)

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