ハイパーサーミアに関する最近の話題34

MR-HIFUマイルドハイパーサーミア治療の最近の動向―温度感受性ドキソルビシンリポソームの併用および放射線増感への利用

 

近藤 隆(富山大学大学院医学薬学研究部)

 

近年,MRガイド下に集束超音波治療を用いて局所的に患部を焼灼する治療法(以下MR-HIFU)は治療部位の画像把握とともに温度が実測できるため局所効果を目指した非観血的治療法として注目されている.最近では経頭蓋的照射が可能な装置が開発され,脳も治療対象となってきた.このMR-HIFUシステムをあえてマイルドハイパーサーミア(MH)に利用する試みが多くなってきた.また,薬物療法は必要な患部に必要な用量を届けることが鍵である.この観点で,MR-HIFUを正確な加温ができるMHとして利用し,画像誘導下に薬物送達を行ったラット横紋筋肉腫治療の報告1)やヒトでも温度感受性ドキソルビシンリポソーム(LTSL-DOX)と併用する試みは肝臓がんを対象に臨床第1相試験として報告されている2).一方,最適の加温時間や治療可能比に関する情報はまだない.今回紹介する論文ではMR-HIFUによるMHとLTSL-DOXとの併用療法で,加温条件の違いによって腫瘍組織のDOX濃度と治療可能比に差が出るかどうかを検討した3)

ここではウサギの肝臓に移植したVx2腫瘍を対象にLTSL-DOXとして“ThermoDoxR”を用いて局所及び全身におけるDOXの分布を42℃,10分及び40分の加温時間で比較した.時間的,空間的に制御されたMHを実施するためにMR-HIFU (周波数1.2 MHz, 出力40-60 W)を用いた.LTSL-DOX投与は加温開始5分で行われた.腫瘍,心臓,筋肉,肝臓,腎臓,脾臓および肺の組織中DOX濃度を調べたが,腫瘍のみ10分および40分の比較で加温に伴う濃度増加(約2.4倍)が認められた.また,非加温腫瘍に比べた腫瘍組織中の薬剤濃度は10分で2.7倍,40分で5.8倍増加した.心臓を対照臓器として加温腫瘍へのドキソルビシン取り込みの比で評価された治療可能比Therapeutic ratioは10分加温で1.9 + 1.3,40分加温で4.4 + 1.8であり,40分加温が優れていた.MR-HIFUは前臨床研究として用いたウサギVx2腫瘍モデルでの温度モニターと制御による正確なMH治療が可能で,リポソーム由来の高濃度のDOXを標的患部に提供する効率的手法である.

今年になって,集束超音波ハイパーサーミアによるHigh gradeグリオーマ放射線療法の増強に関する総説4)および放射線増感のための超音波ハイパーサーミア技術に関する総説5)が発表され,温度モニターできる“正確な”ハイパーサーミア治療(MR-HIFU, MRg-FUS)と放射線治療の併用に関して今後の動向に興味が持たれる.

 

参考文献:

1)  Hijnen N, et al. Thermal combination therapies for local drug delivery by magnetic resonance-guided high-intensity focused ultrasound. Proc Natl Acad Sci U S A. 114: E4802-11, 2017.

2)  Lyon PC et al. Safety and feasibility of ultrasound-triggered targeted drug delivery of doxorubicin from thermosensitive liposomes in liver tumours (TARDOX): A single-centre, open-label, phase 1 trial. Lancet Oncol. 19:1027-39, 2018.

3)  Bing C et al. Longer heating duration increases localized doxorubicin deposition and therapeutic index in Vx2 tumors using MR-HIFU mild hyperthermia and thermosensitive liposomal doxorubicin. Int J Hyperthermia 36: 196-203, 2019.

4)  Schneider CS et al. Radiosensitization of high-grade gliomas through induced hyperthermia: Review of clinical experience and the potential role of MR-guided focused ultrasound. Radiother Oncol. S0167-8140(19)33010-5, 2019.

5) Zhu L et al. Ultrasound hyperthermia technology for radiosensitization. Ultrasound Med Biol 45: 1025-43, 2019.

 

用語解説:

MR-HIFU:Magnetic Resonance–High-intensity focused ultrasoundのこと.MR ガイド下集束超音波(MRI–guided focused ultrasound:MRgFUSやMRgHIFU)と称する場合もある):MRIでリアルタイムに治療部位と温度をモニターしながら,超音波を集束させて,組織を熱凝固あるいは加温する装置である.本邦では今年から,経頭蓋的照射が可能な装置での薬剤抵抗性本態性振戦(essential tremor)の治療に保険適用が認められた.本装置では非観血的脳手術が可能で,パーキンソン病の治療応用も検討されている.集束超音波は前立腺肥大,同癌,子宮筋腫の焼灼療法や乳癌治療にも利用されてきたが,骨転移に伴う治療抵抗性の痛みに対する使用も検討されており利用は広がりをみせている.MRIと一体化した治療装置としてはSonalleve (MR-HIFU),Profound Medical Co. CanadaおよびExablate(MRg-FUS),INSIGHTEC Ltd. Israelがある.Exablate Neuroは経頭蓋的照射用のINSIGHTECの製品である.

 

LTSL-DOX:ドキソルビシンを内部に含むLysolipid thermally sensitive liposomes.  ThermoDoxRはCelsion Corp. NJ, USAの製品である.

 

High grade グリオーマ:WHO脳腫瘍分類第4版(WHO2007)では,グリオーマは星細胞系,乏突起膠細胞系,上衣系に大別される.例外的に良性腫瘍である限局性グリオーマはWHO grade Iに,その他の浸潤性グリオーマは,低悪性群についてはgrade II,悪性群についてはgrade IIIに分類される.最悪性度のgrade IVは星細胞系腫瘍にのみが設定されている(膠芽腫,glioblastoma).

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